管理栄養士による栄養指導
透析と食事
透析療法に医学技術面の進歩は著しく治療成績も向上していますがそれに伴って長期透析患者さんや合併症のある患者さんが増加し、透析治療のもう一方の柱である食事療法の重要性がますます増しています。
食事療法は患者さん自身が行っている大事な治療です。週3回の透析は低下した腎機能の一部を代行するものに過ぎません。毎日の食生活で透析に足りない部分を補い、塩分を制限して心不全を栄養状態を保って感染症の予防を行い、適度な運動も行って健康を維持することは腎不全患者さんの治療成績をよくするためにもっとも重要です。食事はどんな場合でも必要なエネルギー摂取と栄養のバランスが基本です。その上で透析患者さんの食事療法では、塩分、水分、カリウム、リンの摂取制限が必要になってきます。食事は日常生活の中で柱であり、楽しみでもあります。制限のある中で毎日の食事作りは大変なものです。
当クリニックでは、管理栄養士が患者さんのベットサイドまでお伺いし一人ひとりに合った栄養相談、食事指導を行っています。ご希望の方には透析食を提供しています。ご参考にしていただけるように、日頃の献立例から作成した透析食レシピを小冊子としてまとめています。また定期的に料理講習会を開催し、患者さんやその御家族に参加して頂き、調理実習と透析食をテーマとした講義を実施しております。皆さんに少しでもお役にたてるようお待ちしています。どうぞお気軽にお声かけください。
塩分と水分
- ○腎臓の働きが低下してくると、塩分と水分を尿中に排泄する力が弱ってきます。塩分・水分が余分に体内に蓄積すると、高血圧や心不全、肺水腫などの合併症を引き起こします。
- ○塩分を摂りすぎると喉が渇き水分を摂取してしまい、透析前の体重(むくみ)が増加します。塩分8gが貯まると体重にして1kg(1リットルの水分すなわちむくみ)増加します。
《減塩のポイント》
- ◆塩分・水分の多い食品は控えましょう。
- ◆醤油や塩は控え、減塩醤油・酢・香辛料・ケチャップ・マヨネーズなどで味付けの工夫をしましょう。
リンと食事
- ○リンは、ミネラルの1つで、大半は骨や歯の成分です。血液の中のリンは体内に存在するリンのほんの一部ですが、生命活動に大切な役割を果たしています。
- ○血中のリンが高くなると、血管の石灰化により動脈硬化を進行させ、狭心症など心血管等の合併症や下肢の血行障害等の合併症の要因となります。そのため、食事でのリンのコントロールが重要です。
《リンを減らすポイント》
- ◆たんぱく質の摂り過ぎは、リンが高くなる原因となります。目安量を守りましょう。
- ◆リンの多い食品は控えましょう。
- ◆インスタント食品や加工品を控えましょう。添加物である無機リンは、腸からの吸収率が90%以上と高いので特に注意が必要です。
カリウムと食事
カリウムは、食べ物の中にもほとんど含まれています。腎臓が悪くなると、余分なカリウムを尿中に捨てることができなくなるため高カリウム血症をおこし、不整脈や心臓を止めてしまう危険性があります。食事の中でのカリウムをできるだけ少なくする工夫が必要となります。
《カリウムを減らすポイント》
- ◆カリウムの多い食品は控えましょう。
- ◆調理でのカリウム処理が必要です。○切った野菜を30分以上水にさらす ○切った野菜を10分以上ゆでこぼす これで、カリウム含有量は1/5~1/2に減ります。